最強の保湿成分「セラミド」
セラミドは スキンケアの基礎知識①お肌の仕組み と、スキンケアの基礎知識③保湿について で登場した最強の保湿成分です。
しかし化粧品だけではなく、食品や医薬品などにも幅広く利用されているので聞きなじみはあるものの、調べてもよく分からなかったりするのがセラミドです。
実は近年、化粧品表記が変更されて私も驚いたことがあったのですが、セラミドは種類も多いですし、効能も一様ではなく様々だったりします。
しかし毎日のスキンケアで最強の保湿成分を利用しない手はありませんから、セラミドの特性や種類によって期待される効果の違い、それぞれの特徴などを押さえておきましょう。
セラミドの特徴
セラミドはお肌に含まれている美容成分
セラミドとは
Wikiによると、
セラミドはスフィンゴ脂質の一種であり、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合した化合群の総称である。(Wikiより)
ふむふむ。
…あらためまして、なるべくかいつまんで分かりやすく説明すると、セラミドはもともとお肌に含まれている保湿因子(保湿成分)のひとつです。
そしてセラミドは表皮の角層(角質層)内において、角質細胞のすき間を埋め、角質を包むように守っている(角質)細胞間脂質に含まれる保湿因子であり、スフィンゴ脂質と呼ばれる特殊な脂質の一種です。
角層はお肌の表面で外部刺激の侵入や体内の水分が過剰に蒸発してしまうことを防いでいますが、その中でもセラミドを含む細胞間脂質は角層内の水分の80%以上を保持するはたらきがあり、さらに細胞間脂質の50%以上がセラミドで組成されています。
なお、その他の角層の水分のうち、16~17%を天然保湿因子(NMF)が、2~3%を皮脂が守っていますが、その割合から細胞間脂質とセラミドの保湿力がいかに大きなものであるかが分かりますよね。
セラミドの歴史
セラミドは1950年代に発見された成分で、研究によって効果が分かり始めたのは1970年代。
そして構造や組成の研究が飛躍的に発展したのは2000年代以降と、比較的最近になって研究が進められ、各方面から注目されるようになった美容成分です。
また2016年(平成28年)頃には、各種研究結果を受けてセラミドの命名法をあらためて明確にする必要になったことから、科学的名称や化粧品表記名称が変更されたりもしています。
セラミドの特性とラメラ構造
セラミドを含む細胞間脂質は、角質の間をぴったりと埋めながら、水分をはさみ込むように規則正しく何層にも連なっている(ラメラ構造)のですが、本来なら水と交わらない脂質がしっかりと水分をつなぎ止めているのは、セラミドの特性によるもの。
セラミドには水と繋がることができる性質(親水基)と、その逆に水と混ざりにくい性質(疎水基)の二つの性質があり、この異なる性質を併せ持ったセラミドの特性こそがセラミド最大の特徴です。
このセラミドの特性によって、細胞間脂質はわずか約0.02mmの薄い角層内の、さらに狭まった角質の間で緻密なラメラ構造を織りなすことができていますし、この水と油からなる強固なラメラ構造を持つことによって、角層は外部刺激に対する強力なお肌のバリア機能と保湿機能を併せ持つことができているのです。
なお、何層にも積み重なって構成される強固なラメラ構造内の水分は、気温や湿度による影響にも耐えることができ、厳しい寒さや過酷な乾燥状態の中でも水分の凍結や蒸発を許しません。
そしてセラミドは、同様にこの二つの性質を併せ持つ保湿成分の中でも保湿力が最高とされており、以上の理由がセラミドが「最強の保湿成分」とされる所以です。
減少するセラミド
健やかなお肌を保つためには、お肌のバリア機能と保湿機能を左右する、角層内のラメラ構造が常に規則正しく整っていることが大切なのですが、その要となるセラミドは加齢等によって減少してしまいます。
そして、セラミドの減少により角質内の規則正しく緻密なラメラ構造が乱れれば、大事なお肌のバリア機能と保湿機能が低下することに。
セラミドが減少するとされる要因には、加齢以外に生活習慣等もありますが(後述)、たとえ生活習慣を見直してセラミド減少の予防に努めても、誰しも加齢によるセラミドの減少は止められません。
そしてなんと、20代の頃に比べ、50代のお肌はセラミドが約半分に激減してしまうとも言われています。
(画像リンク:日経XTREND「画像によってセラミドの量は減少していく」)
加齢とともにお肌がカサついたりトラブルを起こしやすくなる現象に、セラミドの減少が大きく関わっていることを考えれば、自分のお肌の状態に合わせて適切かつ効果的にセラミドを補給したいですよね。
セラミドの種類
セラミドは塩基と脂質の構成や構造の違いによっていくつかの種類がありますが、スキンケア用品や化粧品に配合されるセラミドは大まかに4種類に分類されます。
それぞれの種類ごとにその特徴や期待される効果等も様々なのですが、セラミドはまだ研究が進められている途上でもあり、近年になって表記が「セラミド+数字(旧称)」から、「セラミド+英字(改正名称)」に改正されたことも。
今後も表記は変更される可能性がありますが、お手持ちの資料があればそれと見比べながら、セラミド配合のスキンケアアイテムを選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。
参考:化粧品成分オンライン「セラミドの解説と化粧品配合セラミド一覧」
化粧品におけるセラミドの効能と安全性
化粧品におけるセラミドの作用と効果は主に、
・細胞間脂質の結合強化によるラメラ構造の安定化による、バリア機能の維持・強化
・角質層内の水分保持力による保湿作用
となっていますが、今後の研究で更なる効果も期待されています。
また化粧品に配合されるセラミドの安全性についてですが、ヒトの体内に存在するセラミドと同一の化学構造を有しているヒト型セラミドについてはもちろん、ヒト角層内セラミドと化学構造が類似している植物性セラミドなどについても、化粧品に使用される配合範囲内においては安全性に問題のない成分とされています。
しかし、化粧品にはセラミド以外の配合成分も必ず配合されていますし、特に植物セラミドなどでは特定の植物性原料を由来とするアレルギーの懸念はあるようですのでご注意下さい。
①ヒト型セラミド
数ある保湿成分としてのセラミドの中でも、特にヒトの体内にあるセラミドと最も近い構造のセラミドです。主に酵母や植物を原料に製造され、保湿力や浸透性が高い特長があります。
化粧品に配合されるヒト型セラミドにもいくつかの種類がありますので、スキンケアアイテムや化粧品を選ぶ際には、それぞれに特徴が違うことも注意したいポイントです。
ヒト角層内におけるセラミドの構造と種類
※12種類すべて角層内ですべて存在が確認済です
スフィンゴイド塩基 | ノンヒドロキシ脂肪酸 (Non hydroxy FA) | α-ヒドロキシ脂肪酸 (Alpha hydroxy FA) | エステルω-ヒドロキシ脂肪酸 (Ester-linked Omega hydroxy FA) |
ジヒドロスフィンゴシン (Dihydorosphingosine) | セラミドNDS セラミド10 | セラミドADS セラミド11 | セラミドEODS セラミド12 |
スフィンゴシン (sphingosine) | セラミドNS セラミド2 | セラミドAS セラミド5 | セラミドEOS セラミド1 |
フィトススフィンゴシン (Phytosphingosine) | セラミドNP セラミド3 | セラミドAP セラミド6 | セラミドEOP セラミド9 |
6-ヒドロキシスフィンゴシン (6-Hydroxysphingosine) | セラミドNH セラミド8 | セラミドAH セラミド7 | セラミドEOH セラミド4 |
化粧品におけるヒト型セラミドの種類
上記表内に含まれない種類もありますが、化粧品に配合されるセラミドには以下のようなものがあります。
化粧品表示名称 ※()内は旧称 | 期待される効果 |
セラミドEOP(セラミド1) | 細胞間脂質の結合強化、ラメラ構造の安定化(保湿、バリア機能の維持・強化) |
セラミドNG(セラミド2) | 水分保持・持続性強化、バリア機能強化 |
セラミドNS(セラミド2) | 水分保持・持続性強化、バリア機能強化 |
セラミドNP(セラミド3) | バリア機能強化 |
セラミドAG(セラミド5) | 水分保持・持続性強化、バリア機能強化 |
セラミドAP(セラミド6Ⅱ) | バリア機能強化 |
セラミドEOH(セラミド4) | 水分保持・持続性強化、バリア機能強化 |
セラミドAH(セラミド7) | 抗炎症・抗菌作用による皮膚常在菌の整調効果 |
②植物性セラミド
ゆずなどの植物内から抽出された天然成分由来のセラミドは「植物性セラミド」とされます。穀物やこんにゃくを原料とした製品の情報を目にしますが、多くの場合グルコシルセラミドであり、厳密にはセラミドではありません(後述)。
ヒト型セラミドより価格は安価ですが、効果やお肌への浸透力はヒト型セラミドに劣るとされています。
植物性セラミドの注意点
一見植物性セラミドに思える製品の中には、その構造上、厳密にはセラミド(スフィンゴ脂質)ではなく、正確にはスフィンゴ糖脂質である場合もありますが、スフィンゴ糖脂質の場合は化粧品成分表記も明確に異なります(ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、コメヌカスフィンゴ糖脂質など)。
逆にスフィンゴ糖脂質ではなく、植物から抽出されるセラミド(スフィンゴ脂質)の場合は、「植物名称+セラミド」、植物由来のヒト同一型セラミドの場合は「植物ヒト型セラミド」などと呼ばれます。
またスフィンゴ糖脂質配合化粧品には、角層内のセラミド生産を促進させる作用がありますが、本来のセラミドの主な効用である直接的な細胞間脂質の結合強化やラメラ構造の安定化に伴う、保湿・バリア機能強化ではありません。
なお、特定の植物原料にアレルギーがある方は、特に成分表記をしっかりと確認することをお勧めします。
動物性セラミド
馬などの動物から抽出される成分で「天然セラミド」「動物セラミド」とも呼ばれています。
植物セラミド同様、正確にはセラミド(スフィンゴ脂質)ではなく、スフィンゴ糖脂質である製品もあるようですので成分表記は必ず確認しましょう(例として馬から抽出された動物性セラミドは「ウマスフィンゴ脂質」などと表記されます)。
ヒトのセラミドと構造は似ているとされ、浸透性の高さや保湿力に優れていると言われていますが、近年では動物愛護の観点からか生産は減少傾向にあるともされ、その影響か価格が高価な製品が多いようです。
その他成分記載例:セレブロシドなど
合成疑似セラミド
石油から合成され、ヒトのセラミド構造に似せて作られる成分で「疑似セラミド」や「合成セラミド」とも呼ばれています。
大量生産ができるため製品も安価に手に入りますが、一般的に効果は低いとされています。
しかし他のセラミドに比べ融点が低く、また油性成分の溶解性に優れるため化粧品に配合しやすいといった特徴もあります。
※最近の記事では花王の研究結果がプレスリリースされていました。
参考:PR TIMES「合成疑似セラミドによる唇のあれへの効果を確認」
なお合成疑似セラミドには、成分表記確認の際に、その成分名が長かったり分かりづらい特長もあります。(例:ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドなど)
セラミド化粧品の選び方
セラミドは水溶性ではない
最近はセラミド配合化粧水も豊富に販売されていますが、セラミドは水と繋がる特性(親水性)を持ちつつも、もともとセラミドは水溶性の物質ではありません。
そのため、最近までは美容液や乳液に配合されることが多い美容成分でした。
セラミド化粧品は美容液がおすすめな理由
またセラミドなどの美容成分は、製品に含まれる配合量によって化粧水と美容液に分かれますが、カテゴリー上、美容成分を多く含むのは化粧水ではなく美容液に分類されます。
ですので、せっかくセラミドを美容目的として取り入れるなら、メインとなるスキンケアアイテムはだんぜん美容液。もちろんまったく意味がないわけではありませんが、化粧水の美容成分や美容効果は補助的なものだと考えましょう。
なお化粧水の本来の目的は、洗顔後に一時的に不安定になったお肌を整え、次に使う美容液等を浸透させやすくすることです。美容成分はなるべく美容液や乳液・クリームなどで補いましょう。
セラミド化粧品の注目点は全成分表示
セラミドの種類でご紹介したとおりセラミド化粧品は種類もいろいろですし、広告表記の効能も様々ですから、つい目移りしてしまいますよね。
動物セラミド(天然セラミド)が一番というメーカーもありますし、ヒト型セラミドが一番というメーカーも。
美容速報としては、ヒトの角質内セラミドに一番近い組成の「ヒト型セラミド」がおすすめですが、他にセラミド化粧品を選ぶ際に気を付けたいポイントは全成分表示です。
もちろんセラミドの含有量が多いに越したことはないのですが、化粧品の全成分表示内で配合量まで明示されることはほとんどありません。
以下が化粧品における全成分表示のルールですが、セラミドの表記が上位にあるものを選びましょう。
☆化粧品全成分表示のルール
・配合されているすべての成分を記載
・配合量が多い成分順に記載
・配合量が1%以下の成分の記載順は自由
・着色剤は最後にまとめて記載
求めるのは質?量?
ヒト型セラミド製品に比べて安価な植物性セラミドや合成疑似セラミド製品には、セラミド含有量が多い製品を安価に入手できるという利点もあります。
もちろん高品質なセラミドが豊富に含まれた商品が理想ですが、セラミド化粧品の価格帯も幅広いもの。目安の価格としては、美容液なら3,000円以上の製品を選びましょう。
おすすめセラミド化粧品
セラミドの減少要因と防止対策
セラミドの減少要因
誰しも避けられない加齢による減少以外にも、セラミドを減少させる要因は存在します。
言い換えれば、若いからといってセラミドの減少は油断ができないということになりますが、セラミドが持つお肌への影響力を考えれば知っておいて損はありませんし、それぞれの注意すべきポイントはスキンケアの基本です。
以下で5項目を挙げましたが、加齢以外でセラミドが減少するポイントは大きく分けると3つ。
・お肌に強い刺激を与えること
・お肌のターンオーバーの乱れを誘発すること
・実感しにくい、UV(紫外線)対策をおろそかにすること
この3つのセラミド減少要因を防ぐこともまた、スキンケアの基本です。
①洗顔
ゴシゴシと強くこする、過度に洗顔回数を重ねる、濃度の高い状態で洗顔料を使用するなど、間違った洗顔もセラミドが減少する大きな原因です。
また洗顔だけでなく、クレンジングなど他のスキンケアを行う際も、薄く繊細なお肌へ強い刺激を与えることは、いかなる理由があってもNG。
スキンケアの基本はお肌に負担をかけないよう「やさしく」「手早く」、そして「正しく」「しっかり」行うことです。
②入浴
熱すぎるお湯も長時間の入浴も、角層からセラミドが流出してしまう原因になります。
また刺激が強いボディソープも避けましょう。特に、一般的に泡のボディソープは界面活性剤含有量が多いので避けたほうが無難です。
最近はセラミド配合のボディソープなどもあるようですが、残念ながらボディソープに含まれるセラミドは、すすぎの際にほとんど流れてしまいます。
ボディソープには美容効果を求めず、低刺激性のシンプルな石けんでやさしく体を洗うほうがお肌のためになります。
③睡眠・食事などの生活習慣
睡眠不足や偏食など、不規則な生活習慣はお肌のターンオーバーを乱す原因です。お肌のターンオーバーの乱れはお肌のバリア機能を下げてしまいます。バリア機能が低下したお肌は外部刺激に弱くなってしまいますので、セラミドも減少。さらにセラミドの生成も低下する悪循環に。
その逆に質の良い睡眠やバランスの取れた食事、適度な運動はお肌のターンオーバーを適切に保つためにとても重要です。
「健康な生活=健康なお肌」を常に心がけましょう。なお、ピーリングなどの角質ケアをスキンケアに取り入れることでもお肌のターンオーバーを促す効果が期待できますし、角質ケアは継続することで角質内のセラミドを増やす効果もあります。
④乾燥
乾燥もお肌のバリア機能を低下させ、セラミドを減少させます。
もっとも、角層が緻密なラメラ構造を維持しているお肌は乾燥にも強いのですが、セラミドが減少する30代以降は特に気を付けたいスキンケアのポイントです。
⑤UV(紫外線)ケア
特に日差しが強い季節以外ではなかなか実感しずらい紫外線ですが、紫外線の恐ろしさは肌老化の原因の80%といわれるその影響力と、見えないダメージをお肌へ蓄積させ続けること。
蓄積した紫外線のダメージは確実にお肌に影響し、お肌のバリア機能を低下させていきますので、これもまたセラミド減少の要因になります。
季節や天気を問わず、室内でもしっかりと紫外線対策を忘れずに。
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