スキンケアの基礎知識①お肌の仕組み
薄くデリケートなお肌ですが、足の裏やてのひらに比べ、顔の皮膚は特にデリケート。
さらにその中でも、目元や目の下は特に繊細です。
そのため、目元には細かいシワや目の下にはクマができやすく、よくある悩みの種になったりしますが、比較的厚く丈夫そうな眉間や頬は、また別の理由で深いしわが刻まれやすい特徴があったり…
スキンケアはそれぞれのお悩みごとに、またお悩みの部位ごとによっても適切なケアが異なりますが「失敗しないスキンケア」のために、まずはお肌の仕組みとその機能をおさらいしましょう。
お肌は3層構造
その薄さから、見ても触れても1枚にしか思えない皮膚ですが、実際は表皮・真皮・皮下組織の3層で構成されています。
とはいえ表皮と真皮を合わせても、その厚さは約2mmほど。
この薄く繊細な皮膚を傷つけないために、毎日のスキンケア時はお肌に「やさしく」、また長時間の負担を避けるために「手早く」、化粧品などのアイテムが効果を発揮できるよう説明書通りに「正しく」、洗顔料などの刺激を残さぬよう「しっかり」と行うことが肝心になります。
お肌の構成上、スキンケアでとくに重要なのは表皮と真皮ですので、以下でその2層に分けてご説明します。
美肌の定義~「肌理(キメ)」ってなに?
美しい肌の条件としてよく用いられる「キメ」とは、お肌の表面の溝(皮溝)と、その溝で囲まれて盛り上がる丘(皮丘)で構成される凹凸のこと。
具体的には手の甲を見ると確認できる、表面に生じた沢山の三角形や四角形の模様です。
お肌の表面は無数の皮溝と皮丘で構成されているため、その凹凸(キメ)は見た目の印象が左右される大事なポイント。
また「キメがこまかい」とは、この凹凸が小さく、かつそのひとつひとつの凹凸がくっきりと規則正しく整ったお肌のこと。
キメが整ったお肌は化粧ノリがよくなるだけではなく、表面を滑らかに見せ、かつ、より外部の光を取り込んで反射してくれますので、表情に明るく柔和な象をもたらします。
表皮と真皮
表皮は外部の刺激からお肌を守る、皮膚の表面部分。上から順に角質層・顆粒層・有棘層・基底層から構成されます。
また基底層では常に新しい表皮細胞が生み出されており、この細胞が細胞分裂を繰り返しながら次々と古い細胞と入れ替わることで、お肌のサイクル(ターンオーバー)が行われます。
真皮は聞きなじみのあるコラーゲンやヒアルロン酸(基質に含まれる成分)などで構成される、いわばお肌を支える土台のような部位。
お肌の弾力を保ち、表皮をしっかり支えることが主な役割なので、よくスポンジのようなイメージで表現されます。
その場所がら、表皮は紫外線や埃など、外部の刺激が体内への侵入を防ぐことや、体内の水分が蒸発することを抑えるシャッターのような「バリア機能」が主な働きで、真皮は表皮の働きを支えるべく、お肌の弾力を保つために水分の保持や栄養を蓄えたり、真皮内にある毛細血管で栄養をお肌のすみずみへ届けるなどの重要な後方支援役を担っています。
表皮と真皮にはそれぞれに一見別な重要な役割がありますが、常に密接に連携して働いているため、毎日のスキンケアでどちらも健全な状態に整えることがとても重要です。
表皮の構成と役割
表皮はさらに、角質層・顆粒層・有棘層・基底層の4層で構成されています。
その構造は各細胞がレンガ状に積み重なるイメージですが、基底層は真皮と表皮を繋ぐ性質から、それぞれに密接しつつ、波形を描きます。
角質層~バリア機能で皮膚を守るお肌の最前線
表皮の最上層を形成する角質層は、お肌を直接的に外部の刺激から守ったり、お肌内部の水分を蒸発させないように守る役割を果たします。
角質層でレンガのように積み重なった層を構成してお肌を守っている「角質細胞」は、内部に「天然保湿因子(NMF)」というアミノ酸などで構成された保湿成分を持ち、角質細胞を囲うように隙間を埋めて水などの異物の侵入防止効果を高めている「角質細胞間脂質」もまた、水分を逃がさないように保持する保湿成分を有しています。
その中でも、とりわけ重要な保湿成分が「セラミド」です。
セラミドは角質細胞間脂質内の約40%を占める主要成分ですが、特筆すべきはその保水力。湿度の変化にも左右されないその保水力で、セラミドは最強の保湿物質とも呼ばれています。
さらに角質層の表面には汗や皮脂で構成される「皮脂膜」があり、この皮脂膜もまた、スクワランやトリグリセリドなどの保湿成分で角質層を守っていますが、分泌される皮脂が多すぎても少なすぎても、お肌トラブルが発生しやすい要因になります。
なお、角質は表皮最下部の基底層で「基底細胞」として生まれた後に、有棘層→顆粒層→角質層へと移動して角質となり、やがて表皮から剥がれ落ちますが、その期間は「ターンオーバー」と呼ばれます。
そしてなんと、この角質層の厚さはわずか0.02mm!
お肌の守りの要は、厚さにしてラップ1枚分のか弱い膜ですから、毎日のお手入れはくれぐれも「やさしく」を心掛けたいものですよね。
お肌のターンオーバー
ターンオーバーとは、表皮の細胞が新しい細胞と入れ替わるまでのサイクルのこと。
ターンオーバーの理想的な周期は28日とされていますが、生活習慣や加齢などの影響で周期が長くなることも。周期が長くなると古い角質がお肌の表面に溜まりやすくなり、お肌のトラブルが発生しやすくなります。
なお、ターンオーバーの理想的な周期を促すケアにはピーリングがおすすめです。
顆粒層~お肌を守る前衛の二番手は光の戦士?
顆粒層も角質層と同様にお肌を守る層ですが、その対象は主に対紫外線。顆粒層内に存在する「ケラトヒアリン顆粒」は表皮内に侵入する紫外線を跳ね返す役割を持っています。
有棘層~表皮最大。免疫と鎮静化作用でお肌を守ります
表皮の中で最も厚い有棘層には、「ランゲルハンス細胞」という強力な免疫細胞があり、このランゲルハンス細胞が体内に侵入する物質が異物かどうかを判別し、対処しています。
異物には体外への排除行動を取りますが、その際にはアレルギー反応が発生します。またランゲルハンス細胞は鎮静化酵素もあり、外部の刺激によって発生したお肌の炎症を抑制し、鎮静化する働きもあります。
基底層~お肌を守る戦士たちの製造工場かつ、お肌も守る働き者
表皮の最下層、真皮の境目にある基底層の重要な役割は、後に表皮の最前線で角質となる「ケラチノサイト(角化細胞)」や、真皮を守ったり表皮を押し上げる「基底膜」にもなる「基底細胞」を生み出す工場の役割。
基底細胞は真皮内の毛細血管から供給される栄養と酸素から作られ、細胞分裂した基底細胞は必要に応じてケラチノサイト(角化細胞)や基底膜となるメカニズムなので、基底層はお肌のターンオーバーの出発点になっています。
また、基底層には外部の刺激から真皮を守るという役割も。
表皮はターンオーバーのサイクルで回復できますが、外部の刺激が下層の真皮に達した場合、そのダメージを完全にもとへ戻すことができなくなってしまうため、基底層は最下部の「基底膜」と一体化して強い膜状となり、さらに真皮とも結合して強力なお肌の守り役も担っています。
お肌を紫外線から守る仕組み(メラノサイト)
基底層に含まれる「メラノサイト(色素細胞)」の役割は、真皮を紫外線から守る役こと。メラノサイトは紫外線を浴びることで活性化し、メラニン色素を生成して紫外線から真皮層を守る働き(日焼け)をしますが、メラニン色素が下層の真皮に達するとシミになってしまいます。
なお、加齢とともにシミができやすくなるのは、加齢とともに衰える基底膜の性質も一因。基底膜の働きが弱まることで、メラニン色素が真皮に達しやすくなってしまうため、シミができやすくなるのです。
そして、お肌のバリア機能を低下させるのは加齢だけではありません。
不規則な生活習慣や過度なダイエットなどで栄養不足や貧血など、健康状態が良くない場合は基底層に届く栄養も不足がちになり、ターンオーバーの乱れになることも。
規則正しい生活習慣や栄養バランスの取れた食事、正しいスキンケアを心掛けて、お肌の健康状態を保ちましょう。
真皮の構成と役割
真皮はコラーゲン・基質・エラスチン・線維芽細胞で構成されますが、表皮のレンガ状とは異なり、網目状の構造になっています。
その網目を形成するのがコラーゲンで、コラーゲンの網を補助するのがエラスチン、コラーゲンに包まれるゼリー状の物質が基質で、これらを生み出す細胞が線維芽細胞です。
コラーゲン
「コラーゲン」は、繊維状の丈夫なタンパク質。
真皮内で網目のように広がり、お肌の弾力を保ちます。
そのため、コラーゲンの減少や変性はお肌の弾力が失われる要因となり、それが気になるシワやたるみの原因になることも…
なお、コラーゲンは水分を除いた真皮の約70%を占める、真皮の主要成分です。
ヒアルロン酸
コラーゲンの網目で囲まれたゼリー状の成分が基質で、「基質」内に含まれるお肌の重要成分が「ヒアルロン酸」です。
基質はゼリー状なので弾力もあり、真皮内の構造を安定して保つ役割がありますが、基質の成分中でもヒアルロン酸は保水力が高いため、化粧品の美容成分としてよく使用されます。
エラスチン
「エラスチン」はゴムのような弾性のある繊維状のタンパク質で、コラーゲンと結合してコラーゲンをサポートする役割があります。
加齢とともに減少する性質があり、エラスチンの減少もお肌のシワやたるみの原因になります。
線維芽細胞・その他
真皮内のコラーゲンやエラスチンといった繊維状のタンパク質や、ゼリー状の基質を生成する細胞が「線維芽細胞」ですが、そのほか真皮内には毛細血管や神経、汗腺や皮脂腺、リンパ管などもあります。
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